第2部「ショートピッチ・ポスターセッション(スタートアップ企業と県内事業者の紹介、出会いの場)」を経て、第3部では「次世代につなぐアグリビジネスに挑む 〜未利用資源を活用した肥料・飼料・食料生産〜」というテーマでパネルディスカッションが行われました。高知県内で循環型ビジネスに取り組む永野敬典氏と、この日のために県外から駆けつけた石田陽佑氏と河村洋一郎氏の3人でディスカッションを行いました。
[登壇者]
株式会社相愛 / 株式会社エコデザイン研究所 代表取締役社長 永野 敬典氏
株式会社TOMUSHI 代表取締役CEO 石田 陽佑氏
川村通商株式会社 取締役 川村 洋一郎氏
[モデレーター]
株式会社リバネス 研究開発事業部部長 川名 祥史
「今日は『次世代につなぐアグリビジネスに挑む』というテーマで話していこうと思いますが、私は議論だけで終わらせたくはないと考えています。パネリストの方々、さらには会場にいらっしゃる方々とともに高知県という場所で新しい試みに挑戦したい。ここでの議論をきっかけに世界中の誰もやっていないようなことを始めたいと思っています」。
そんなモデレーターのあいさつでパネルディスカッションがスタート。まずは3名のパネリストの方に自らの取り組みについて話していただきました。最初は、地元・高知で「循環型ビジネス」に取り組んでいる、株式会社相愛および株式会社エコデザイン研究所代表取締役社長の永野敬典氏です。株式会社相愛は、もともとは地質調査や測量を手掛けていましたが、20年ほど前、循環型社会の到来を見据えて株式会社エコデザイン研究所が起ち上がりました。同社では木質バイオマス発電や木質燃料の開発に着手する一方で、微生物を活用することで食品残渣など有機廃棄物を肥料化する事業を始めています。
次いで、県外から駆けつけられた2名からの自己紹介です。まずは、秋田県で昆虫、特にカブトムシの産業化という、ユニークな試みに挑戦されている株式会社TOMUSHI代表取締役CEOの石田陽佑氏です。TOMUSHIではカブトムシの生産・販売や昆虫情報サイトの運営などを行っていますが、それとともに昆虫の力で、有機廃棄物を肥料や昆虫食などのタンパク源に変えるという試みもスタートしています。JAとの共同開発により、農業廃棄物の肥料化に取り組むなど着々と実績を積み重ねています。
もう1名は、東京・浅草にある老舗企業、川村通商株式会社取締役の川村洋一郎氏です。同社は、1932年(昭和7年)の創業以来、皮革、薬品事業や国産牛、豚、鶏肉などの食品事業を手掛けてきましたが、アニマルフリー、アニマルリスペクトといった概念が広がるなか、「家畜にも人にも地球にもやさしい社会を創造したい」と考えるようになりました。そこで、まずは畜産農家が処理に困っている糞尿を堆肥化、有機栽培を行っている農家に販売するという試みを始めました。今後はホテルなどに専用の堆肥舎を建設し、ファーミングのシステム構築までをサポートすることで、資源のプチ循環を図るといった試みにも挑戦したいと話しました。
永野氏は食品残渣等、石田氏は農業廃棄物等、川村氏は牛や豚等の家畜の糞尿──。それぞれ扱うものは異なりますが、「これまで再利用されていなかった有機廃棄物を肥料や飼料としてよみがえらせる」という点は共通しています。そこで、ここからは3人が協力して、高知県で何か新しい試みができないか、それには何が必要かについてディスカッションしました。
まず石田氏が「永野さんや川村さんの試みと、私が手掛けているカブトムシのノウハウを組み合わせれば、まったく新しいことができると思います」と提案しました。しかし、永野氏、川村氏、さらにはモデレーターの川名も、カブトムシをどう活用するのか、具体的にイメージできない部分もある様子で、矢継ぎ早に質問を投げ掛けていました。これに対して石田氏は「カブトムシはタンパク質が豊富なので、肥料にも飼料にも適していますし、人間が食べる食糧にもなります」と話します。実際、大手コンビニチェーンと共同でカブトムシを使った食品の開発も進めていて、「この秋にはクッキーが発売されるので、ぜひ食べてみてください」と石田氏。
次いで地元・高知県で長く事業を続けている永野氏から「高知には高知ならではの資源がある。それを地域の経済性を考慮しながら、どう循環させるかを考えていくことが重要」という提言がありました。これに川村氏がすぐに反応。「熊本県や岐阜県に有機農家さんの間で評判のいい堆肥所があるのですが、そういった堆肥所は決して多くありません。高知県は農業が盛んで、環境的にも恵まれているので、新しい堆肥所をつくることができたら素晴らしいと思います」。続いて石田氏も高知の魅力に言及します。「昨日まで四国のほかの県に滞在していたのですが、そこの方たちが『高知ほど農業に適した土地はない、かなわない』と話されていました。それを聞いて、高知なら新しいことができると確信しました」。
さらに川村氏が「もし高知で次世代型資源循環システムのロールモデルのようなものを作れるなら、東京から移住したいな、と思いました」と発言すると、石田氏も「私も高知に豊かな農地があることを知ったので、有機廃棄物が多くでるのであれば、高知に移住してカブトムシ産業を立ち上げたいですね」と賛同の意を示します。これを受けて永野氏は、「お2人のような若い方が、希望を持って新しいことに挑戦できるような地域作りに取り組まなければならない」と話されました。
この後、環境教育の必要性などにも話題が広がり、近いうちに同じメンバーで再びアイデアを出し合うことを約束してセッションは終了しました。
文責:株式会社リバネス
キーノートセッション、パネルセッション、ショートピッチはアーカイブ動画を配信しています。配信希望も3月末まで受け付けておりますので、ぜひご覧ください。
こうちネクストコラボプロジェクトでは、高知県内事業者のグリーン化に関する新事業創出を支援しています。
9月以降は、高知県内の企業とスタートアップ企業や研究者との連携を具体化していくために視察や仮説の検証等に取り組んでいきます。また、スタートアップ企業や研究者との連携のご希望やご相談はこれ以降も随時受け付けています。
既に新事業に取り組んでいる方、これから取り組もうと考えている方など、新事業に興味をお持ちの方はいつでもご参加可能ですので、以下の「お問い合わせ」先までご連絡をお願いいたします。
<お問い合わせ>
主催:高知県 産業振興推進部 産学官民連携課(担当 山本、澁谷、川田)
(電話)088-823-9781
(メール)121701@ken.pref.kochi.lg.jp
運営:株式会社リバネス(担当 岸本)
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